Project Story プロジェクトストーリー
自動で流量を調整する『フロコンシリーズ』は当社を代表する製品の一つ。
この製品が誕生した裏には、大手企業に挑み、大逆転を掴んだストーリーが隠されています。
衝撃の価格で
仕事を奪われた日
ある日、よく一緒に仕事をしていた一人の営業から電話がありました。用件は彼と私が担当をしていたフローコントローラ(流体の計測・制御をする機器)が納品先の半導体メーカーで他社製品に置き換えられていたというもの。状況を確認しようとすぐにお客様の元へ伺いました。
機密情報でもあるため十分に状況は確認できなかったのですが、長くお取引もあったためご担当者からはお話をお聞きすることができました。他社製品は一定の品質があるうえに、価格は市場の1/5程度。
愕然としました。この先ライバル企業に仕事を奪われていく未来が見え、冷や汗が流れました。帰りの車内で担当の営業は「俺、このまま仕事が減っていく状況を指をくわえて見てられないよ」と何度もため息をついていました。
圧倒的な価格差の前に打つ手立てを見つけられずにいました。
後で聞いたことですが、上場しているこのライバル企業はこの案件に大規模なプロジェクトチームを作っていたそうです。担当の営業は売上No.1の実績をもち、エンジニアは10名も携わっていました。一方で東フロは30歳の営業と技術の二人のみ。とてもひっくり返せる状況でないことは、私を含め誰もが理解していました。
絶対に完成させる
という強い意思
このまま諦めていいのだろうか?本当に可能性はゼロなのだろうか?日を追うごとにその思いは強くなっていき、私と営業は再びチャレンジをする意思を固めました。
とはいえ、平坦な道のりではありません。競合製品はよく出来ており業界内でも話題になるほど。これまでのやり方の延長線上では答えを見つけることができません。すべてのプロセスを見直しました。お客様のもとへ何度も足を運び情報を収集。ある時、完璧と思われていた競合製品にも課題があることが見えてきました。可能性はまだある。それは同時に私たちの開発の方向性を決定付けるものとなりました。
方向性が決まれば、その後の開発スピードは増していきます。新たに通信機能の追加、耐久性の向上、手入れのしやすいデザインなど。水漏れ防止についても万全を尽くしました。新規性の高い設計ではトラブルが起きやすいため、数百回にわたるテストを繰り返し実施。通信エラーやソフトのバグが発生するたびに一つ一つ丁寧に解消をしていきました。バルブから異音が発生したときには外部の専門家に意見を伺うなどし、製品の完成度を高めていく努力を行っていきました。製品の価格を下げるためには、技術職でありながら私が協力会社と直接交渉をしました。材料や部品の見直しなど一円でも下げるためにあらゆる努力を惜しまずに取り組みました。数え切れないほどの壁にぶつかりましたが、気持ちは全く折れませんでした。高い壁ほど越えたくなる、ライバル企業に負けられない、期待に応えたい、そんな思いが突き動かしました。
可能性にかける
職場風土
やっとの思いで製品は完成しました。しかし、この製品を取り入れるかどうかの判断はお客様次第。ご納得いただかなければ購入はされません。製品の評価がでるまではずっと緊張が続いていたのを覚えています。
結果は私たちの製品を新たに採用されることが決まりました。誰もが無理だと思っていたことをやってのけたのです。ただひたすらに嬉しく、言葉に表せないような達成感でした。
思い返せば営業からの一本の電話から一年半が過ぎていました。いつ開発が終わるかわからず、成功の見込みの低いプロジェクト。それにも関わらず、
会社から一度としてプロジェクトの中止を命じられることはなく本当にありがたかったです。私と営業の本気の姿勢を応援してくれる風土なんだなと改めて実感しました。この体験は私の自信であると同時に、開発の面白さを再認識させてくれることとなりました。この件以来、私の開発への熱はより高まり続けています。